業務改革リーダーの心得

オフィスの現場で業務改革に取り組むリーダー達へ、壁を乗り越えてゆくためのノウハウや心得をお伝えします。

どうすれば業務担当者の協力を得られるか

業務改革に不可欠なものを一つだけ挙げるとすれば、それは取り組みに協力してくれる業務担当者だ。業務改革リーダーには、部外の者がアサインされることが多い。特に、大きな業務改革ではある種の専門スキルと資質があった方が都合がよく、また人間的なしがらみにもあまり捉われずに済むからである。

 

部外の者が業務の実態を実地に理解し、改革の影響を的確に把握することは難しい。特に例外処理などの業務の詳細は、たいてい断片的にしか文書化されておらず、業務担当者も必要な都度、やり方を調べたり、記憶を辿ったりして、その場その場を凌いでいることが多いからである。理解するには、実際に業務に従事し、追体験してみるしかないが、それとて割ける時間には限界がある。結局、業務改革を的確に遂行するためには、業務担当者の協力が不可欠となる。

 

業務担当者の協力を十分に得られるかどうかは、相性や時期(繁忙期か等)など、運に左右されるところもあるが、リーダーがどのような姿勢・態度で接するかも、大きく成否を左右する。このとき求められるのは、業務と業務担当者を真摯に「理解」しようとする姿勢と、取り組みにおける「誠実さ」である。

 

業務課題を理解するには、根気が要る。もともと複雑であり、必ずしも体系的に整理されているわけでもないので、せっかちな人には、要領を得ない話を聞くだけでも耐え難いのである。そして大上段にバサッと切り捨てて、取り組みを現場に押し付けてしまったりする。これではまず仕事にならない。

 

業務改革リーダーには、ときには無駄な話であっても、じっと我慢して相手の話を受け止める度量が求められる。この理解しようとする姿勢があってはじめて、相手は胸襟を開きはじめ、協力に向けてベクトルが揃ってゆくのである。このためには、陰でも表でも、決して悪口を言ったりしてはならない。そうした感情は、次に相手に会ったとき必ず感覚として伝わってしまう。

 

また、業務担当者に積極的に改革に協力してもらうためには、足を踏み入れても悪いことにはならない、ハシゴを外されないという、安心感を与えることが何より大切である。そうした信頼は、誠実さをもってしか培うことはできない。これは業務担当者との関係に限られない。業務改革を進めるには周囲を全方位的に巻き込んでいく必要がある。したがって、誰に対しても、誠実でなければならないのだ。

 

良き協力者が得られれば、業務改革リーダーにとって鬼に金棒である。新しいアイデアの筋が良さそうか、実現可能性があるかどうかを、気軽に相談し、たちどころに確認できるようになる。生産性の向上への貢献は計り知れない。ともに改革を進める「仲間」がいることの心強さもリーダーにとって心の支えになろう。そして、改革を達成したときの喜びも分かち合うことができる。

 

一つだけ、決してやってはならないことがある。何があっても業務担当者を責めてはならない。明らかな業務担当者のミスがあったとしても、それを鵜呑みにした責任は業務改革リーダーにある。業務担当者は悪意があってミスをしたわけではないし、自分の責任もよく理解している。しかし、そもそも改革に責任を負っているわけではないのだ。あくまで協力者なのである。

 

良き協力者を得よう。しかし、すべての責任はリーダー自身が取ろう。

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