業務改革リーダーの心得

オフィスの現場で業務改革に取り組むリーダー達へ、壁を乗り越えてゆくためのノウハウや心得をお伝えします。

業務改革へのコンサルタントの利用

ひと昔前は、業務改革の名目でコンサルタントを雇い入れ、その提言を人員削減やシステムの強制的な導入の正当化に使うといったことがしばしば見られた(今でもあるかもしれない)。この場合、コンサルタントによる報告や提言は、予め依頼者たる経営層の意を汲んだ、いわば出来レースとなる。ここでは、そういった「形」を得るための利用ではなく、業務改革の「中身」を得ることを目的としてコンサルタントに依頼することが有用か、またどのように利用すべきかを論じたい。

 

はじめに、業務改革においてコンサルタントに何ができるか。前回までに論じた「1) テーマ設定」〜「5) 承認獲得と解決策の実行」までの5つのステップに沿って、コンサルタントに任せることの妥当性を検討する。

 

①テーマ設定:◎
→数ある課題を整理し、取り組むべきテーマを優先順位付けすることは、コンサルタントの得意とするところである。ただし、コンサルタントによっては、意識的にか無意識的にか、自らのビジネスにつながるテーマ(たとえばシステム導入)を優先してしまうことがあるので注意が必要だ。ある程度、自らの仮説を持った上で、投げかけを行うスタイルが望ましい。

 

②概要調査:◯
→これがうまくいくかどうかは発注者側がどこまで協力できるかによる。対象業務のキーパーソンがプロジェクトにアサインされ、要点を押さえた情報が提供されれば、社員以上に的を得たレポートをまとめてくるだろう。他方で、情報提供が十分でないと、体裁ばかり美しいが中身の薄い空疎なレポートが上がってくることになる。

 

③解決の方針とビジョンの明確化:◯
コンサルタントの得意領域との整合性にもよるが、②がしっかりしていれば、他の事例なども踏まえた有益な提案が期待できる。ただし、実際に方針としてどこを目指すのかは、結局のところ発注者の意思次第である。ブレーンストーミングKJ法等のスキルを使って、それを引き出す手助けはしてくれるが、そもそも発注者に意思や想いがなければ、ありきたりの改革メニューしか出てこないだろう。

 

④詳細調査および解決策の具体化:△
→詳細調査については、コンサルタントがどこまで必要な情報にアクセスできるかが成否を左右する。解決策の具体化については、詳細調査で十分な情報が得られ、かつ、コンサルタントの経験、スキルが適合すれば大きな成果が得られるが、具体化の最後の仕上げは発注者側で行う必要がある。また、前提となる詳細調査が不十分であれば、誰がやってもまともな解決策は得られない。

 

⑤承認獲得と解決策の実行:▲
→ここまで来ると、コンサルタントにできるのは、上層部へのプレゼンテーションくらいのものである。しかし、コンサルタントが非の打ち所がないプレゼンをしたとしても、実際に解決策が承認に至るかどうかは、プレゼンそのものよりも、その事前、事後の業務改革リーダーの根回しや立ち回りによるところが大きい。

 

以上から、コンサルタントの利用は、活動の当初が最も効用が大きく、具体化が進行するにつれて低下していくことが分かる。これは当然で、特に大きな組織では、ルールやシステムが網の目のように張り巡らされており、細部に分け入るほど、部外者がおいそれと具体策を立てたり、関係者と調整したりするのが難しくなるからである。

 

したがって、業務改革リーダーがコンサルタントを雇うときは、コンサルタントの提案を実際に実行するのは自分自身であることを肝に命じなければならない。そして、コンサルタントの提案内容を完全に理解して自分のものとするためには、一般論に近いコンサルタントの提案と、業務の現場の実状との間に、多かれ少なかれ発生するギャップをなるべく埋めていかなくてはならない。

 

無能なコンサルタントほど専門用語や難解な概念を多用し、あえて質問しづらい雰囲気を作って逃げようとするものである。逃がしてはならない。そのレポートは業務改革リーダー自身の作品となるからである。徹底的に質問攻めにして、中学生でも読めるくらいわかりやすいレポートに仕立てさせよう。

 

コンサルタントの提案を実行し、その責任を取るのは業務改革リーダー自身なのである。

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