業務改革リーダーの心得

オフィスの現場で業務改革に取り組むリーダー達へ、壁を乗り越えてゆくためのノウハウや心得をお伝えします。

業務改革リーダーはアイデアマンでなければならないか

業務改革にアイデアは必要か。
これは100%YESである。複雑な問題を解決しようとすると、どうしてもその解決策も複雑に考えてしまいがちである。こうしてがっぷり問題と組み合っていると、複雑な仕組みをどう取り扱うかに心を奪われるあまり、ときに自分達がそもそも何をしたかったのかさえ、見失ってしまうことがある。

 

そんなとき、それまで黙って話を聞いていた若手メンバーが放つ、「そもそも⚪︎⚪︎が問題なのであれば、⚪︎⚪︎自体をなくしてしまえばいいんじゃない?」といったひと言が、一気に事態の突破口を開くことがある。こうしたコロンブスの卵のようなアイデアの価値は計り知れない。そのアイデア一つで、その後何年にもわたって業務負荷を何割も削減してしまうこともあるのである。

 

では業務改革リーダーはアイデアマンである必要があるか。
答えはNOである。なぜなら、アイデアはリーダーでなくても出せるからだ。リーダーの仕事は、アイデアを持っている人の協力を取り付け、「場」をつくってアイデアを引き出し、引き出したアイデアを取捨選択し、そのアイデアを実行することである。むしろ、中途半端にアイデアを自分で持ちすぎると自分のアイデアに捉われて、こうしたリーダーとしてより大事な役割を果たしにくくなってしまう。

 

それでも業務改革リーダーは、改革の最前線にいるだけあって、他のメンバーより多くのものが見えており、良質なアイデアも浮かびやすい。しかし、あえてそのアイデアを自らアピールすることは控えておいた方がよい。あたかも改革チームとして出したアイデアであるかのように振舞っていくのだ。そうすることで、メンバーは、そのアイデアを自分のものとして実行しようとしてくれる。他方で、他のメンバーからアイデアが出てきたときは、手放しで賞賛しよう。そのメンバーは否応なく奮い立ち、協力してくれることだろう。

 

自己顕示欲は人間の根源的な欲求の一つである。これを抑え込むことは簡単なことではない。大政治家ですら、その誘惑に抗しきれない。だから、せめて自分のアイデアを自慢する程度には、他のメンバーのアイデアを賞賛することにしよう。そして、自分が上げた成果を、自分だけでなく、チーム全体のものとして語るようにしよう。ここまでできれば、業務改革のプロに近いところまで来ている。業務改革リーダーのもとには次々とアイデアが寄せられ、さらに大きな成果を生み出していくことになるだろう。

 

自らアイデアマンになるのではなく、他人からアイデアを引き出し、実現するリーダーになろう。

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