業務改革リーダーの心得

オフィスの現場で業務改革に取り組むリーダー達へ、壁を乗り越えてゆくためのノウハウや心得をお伝えします。

業務改革リーダーとしての飛躍のチャンスを掴む

1.チャンスを掴めるかどうかで業務の将来が変わる

「業務改善」は定着させ、高度化させるべき「プロセス」であり、「業務改革」は成功させるべき「プロジェクト」である。
業務改善では何よりも活動を継続し、プロセスとして組織に定着させることが重要である。組織を変えていく取り組みなので、良きリーダーに恵まれるかどうかという与件はあるものの、運不運によって取り組みの成否が左右される余地は大きくない。

対して、業務改革は関係部門との相互作用の中で成果を生み出していくプロジェクトなので、必然的に、様々な外部要因が絡んでくる。それがどう作用するかによって、当初の想定を超えた活動成果につながることもあれば、残念ながらとん挫してしまうこともある。そこには大きく「運」が作用してくる。

チャンスはそう巡ってこない。それは一度きりかもしれないし、少なくとも、同じ状況で同じチャンスが巡ってくることはない、一期一会のものである。したがって、ここ一番というときには無理をしてでもチャンスを掴みにいかなければならない。業務改革リーダーが大きな成果を望むなら、チャンスに鈍感であってはならない。

ここでいうチャンスとは、組織改編、システム導入、ルール変更、人事異動など、改革対象業務の関係部門にとっての揺さぶりとなるような変化のことである。こうした変化に便乗することで、通常であれば到底達成できない、あるいは膨大な調整工数がかかるような改革を、いとも簡単に達成できてしまうことがある。どさくさに紛れて果実を掴み取ってしまうのである。

筆者はこうしたチャンスをモノにすることで、その後の改革の潮目が大きく変わる光景を何度も目にしてきた。成し遂げてきた改革の中には、チャンスがなければ到底不可能だったものも少なくない。

2.チャンスを掴むにはどうすればよいか

とはいえ、ただでさえ忙しい日常の中で、なんの前触れもなく外から入ってくるチャンスに反応し、掴みにいくのは生易しいことではない。自分が良くしようとしている業務の将来まで見据えて、大局的に判断する必要がある。当面は辛くても、ここで踏ん張ることによって得られる見返りは、とてつもなく大きいかもしれないのだ。

ではどうやってチャンスを掴むか。チャンスを掴むきっかけには以下の3つのパターンがある。
①外から降ってきたチャンスを受け取る
②外部で起きていているチャンスを自ら掴みにいく
③自らチャンスの気運を作り出していく

①は受け取るかどうかを判断するのみである。業務改革リーダーが腹を括れるかどうか、また、括るべきかどうか。その一点に尽きる。

②のように、外部で起きていているチャンスを自ら掴みにいくためには、日頃アンテナを貼っておくことが必要となる。例えば、組織内外の連絡用メーリングリストに登録する、情報発信・共有のためのメルマガを購読する、SNSに参加するなど、常に新しい情報が流入するような仕組みを作っておく。情報が多すぎると、それはそれで問題はあるのだが、明確な関心や問題意識を持っていれば、タイトルだけ流し読みしてても、関係しそうな情報は自然と目に飛び込んでくるものである。あまりきちっとした作業として固める必要はない。

もう一つ、日頃から周囲に自らの問題意識や取り組みテーマをアピールしておくことも有効である。こうしておけば、周囲がキャッチした情報を伝えてくれることも、ままあるし、理解者が増えれば、思わぬところで力を貸してくれたり、活動を擁護してくれたりすることもあるからである。

次に、感知したチャンスを、どうやって掴みにいくかである。これには多少の図々しさとスピードが重要となる。もともと自部門抜きでも動いている話なので、グズグズしていればチャンスを逸してしまう。筆者の感覚では、動くべきは即日である。情報が発信されたということは、組織が何らかの変化を起こしているということである。組織は動かないときは何年でも硬直しているが、いったん動き出すと数日単位で状況が大きく変わっていく。その船に自分も乗せてもらうのである。まずは事実関係を正確に掴む。そして、ときには強引に、組織の変化に便乗し、自ら達成しようとする取り組みと同期させてゆくのである。

3. 自らチャンスの気運を作り出していく

最後に③だが、人間は、自らチャンスを作り出すこともできる。自らが本当にやるべきと信ずることは、これによって達成するしかない。どうすればよいか。

まず、無風状態のところから風を巻き起こし、組織を動かしていくのだから、持続する、確固たる信念が必要である。このためには、どんな逆境にも耐え得るような、強固な改革のコンセプトが必要だ。また、追い風がない以上、前進するときには常に逆風にさらされることになる。これに耐え続けられるだけの理論武装も必要だ。

なぜそれを行なうのか。どうしてもやらねばならないのか。最終的にどのような姿を目指すのか。いつまでに成し遂げねばならないのか。誰がそれを望み、望んでいないのか。メリット・デメリットは何か。どんなリスクがあり、どう対処するのか。過去あるいは他部門で参考となる事例はなかったか。実現した後に何が変わり、変わらないのか。どうやって実現するのか。誰と調整する必要があるのか。

このあと数知れぬ試練に耐えていかなければならない以上、こうしたコンセプトづくりにはいくら時間をかけても、かけ過ぎることはない。同僚や関係部門の感想やアドバイスを求めながら、徹底的に詰めることだ。ここでの検討の積み重ねが、その後の説得の際、目に見えぬ「迫力」となってゆく。決して無駄になることはない。

いったんコンセプトが固まれば、キーメッセージも固まってくるので、あとはそのメッセージを広く関係者に繰り返し説いて廻るのだ。こうして始めて、少しずつ「風」が吹き始める。まずはその小さな風で動かせる範囲のことに手をつけていくのだ。実績を積むごとに「風」は力を増していく。そしてやがて大きな業務改革をも実現するうねりとなっていくのである。

4. チャンスを掴みにいく人間になる

人は一生の中で、いくつもの岐路に出会う。チャンスに巡り合ったとき、それを掴みにいくか、受け流すか。その一つ一つの決断が、業務改革リーダーとしての器を決めてゆく。業務改革に失敗しても、人の命にかかわることは、まずない。失敗してもいいのだから、挑戦しよう。禍根を残すような不誠実な行いをしない限り、失敗しても再起はできる。否、諦めない限り失敗はないのだ。

 

チャンスを掴みにいこう。

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