業務改革リーダーの心得

オフィスの現場で業務改革に取り組むリーダー達へ、壁を乗り越えてゆくためのノウハウや心得をお伝えします。

なぜ業務改革プロジェクトは失敗してしまうのか

以前、オフィスでの業務改革が進まない理由として、製造現場と違って、課題が人間そのものであり、これに対応する有効な方法論が確立されていないためと説いた。業務改革には、こうした問題解決の難しさのほか、プロジェクト運営の難しさがある。

 

業務改革のプロジェクトは、途中でとん挫したり、骨抜きになったり、自然消滅したりすることが実に多い。元手がかからないので、わりと気軽に立ち上げられるものの、なかなか最後まで行き着かない。業務を分析し、課題を抽出したところで終わってしまうことも、また多い。

 

なぜだろうか。筆者は業務改革プロジェクトが失敗する原因として、大きく以下の3つのパターンがあると考える。

①責任者の関心が持続しない
②関係者間での利害対立が解けない
③そもそもやる必要性が感じられない

 

①責任者の関心が持続しない

業務改革プロジェクトが開始されるパターンには大きく、経営上あるいは部門運営上の要請からトップダウンで始まるものと、現場ニーズからボトムアップで始まるものの2通りがある。どちらが成果が出やすいかといえば、圧倒的に後者である。なぜかといえば、通常このケースでは、改善に対して強烈な、持続する関心があるからである。
前者の場合でもトップの強烈なコミットメントがあれば、大きな成果が出る。最悪なのは、トップダウンで始めたにも関わらず、アイデア出しを現場に丸投げするパターンだ。まずろくな成果は出ないが、実情はこのパターンが最も多い。責任者にとって楽だからだ。しかし、現場にとっては迷惑この上なく、貴重な戦力を無駄に疲弊させること間違いなしである。

 

②関係者間での利害対立が解けない

ある部門の業務改革が他の部門の業務負荷やコストの増加をもたらす場合がある。組織全体でみればプラスに作用するとしても、負担が増える部門に限ってみれば改悪であり迷惑でしかない。こうした場合、関係者間あるいは部門間での利害調整を担う機能がなければ、いつまで経っても膠着状態は解けず、やがて改革は座礁する。
現場部門内で閉じている改革では、当然ながらこうした問題は起こりにくい。もともと利害は一致しているからだ。要は、大組織において、トップが思いつきで始め、IT予算も付けず、自ら調整し決断する意思も示さないプロジェクトは、失敗しやすいということだ。

 

③そもそもやる必要性が感じられない

商品が売れなければ、会社は早晩倒産する。しかし、業務改革が進まないからといって、会社がそう簡単に傾くことはない。ならば、会社が業務改革より営業を重視するのは当然である。また、商品開発やシステム構築にはお金がかかる。いったん資金を投入してしまうと、途中でとん挫してしまえば、責任者は責任を問われる。しかし、業務改革の場合、それがIT投資を伴うものでない限り、仮にとん挫したとしても、せいぜい投入した人的リソースが無駄になるだけである。人的コストも、成果物も、目には見えにくいので、ごまかしやすいし、言い訳もしやすい。しょせん業務改革は「しなくてもいい」ことが多いのだ。

 

さて、このように失敗することが多い業務改革のプロジェクトだが、どう取り組めばよいのか。

実は、上記の3つのパターンは、いずれも同じ原因で起きている。すなわち出発点となる目的が関係者間で共有できていないのだ。どこを目指すのかという目的が共有されないままプロジェクトを始めてしまうから、関心は持続しないし、関係者間での利害対立は解けないし、そもそもやる必要性が感じられないのである。従って、業務改革プロジェクトを成功させるには、関係者間で明確な目的を共有することが出発点となるし、目的を共有できる範囲が、いま業務改革リーダーたるあなたが取り組める範囲なのだ。それ以上に手を広げれば、まず成功は覚束ない。

 

現場起点で始める業務改革が成功しやすい理由もここにある。すなわち、範囲が限定されているから目的意識を共有しやすいし、共有できる範囲でしかプロジェクトも立ち上げられないからである。取り組む範囲を限定することが常に正しいというわけではない。現場主導の業務改革はときに部分最適に陥り、組織全体としては、別の課題を生み出すことにもなりかねないからである。風呂敷は広い方がよい。ただし、目的意識を共有できる範囲でだ。それさえできれば、たいていのことは達成できる。全社で目的意識を共有できれば全社改革さえも実現できるだろう。あとは業務改革リーダーの意志次第だ。

 

業務改革プロジェクトの目的は、その目的意識を関係者間で共有できる範囲で設定しよう。

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