業務改革リーダーの心得

オフィスの現場で業務改革に取り組むリーダー達へ、壁を乗り越えてゆくためのノウハウや心得をお伝えします。

熱意をもって「悪役」を演じる

部外の者が(社内の他部門の者か、外部コンサルタントかにかかわらず)、業務改革をミッションとして他の部門の業務にメスを入れるとき、業務担当者から、何もわかっていないくせに、といった嘲笑を受けることがある。

 

はじめてこの洗礼を受けると、誰しも動揺するものである。しかしこれは、筆者も何度も経験してきたが、業務改革リーダーがごく普通に直面する風景なのである。これは、自分の領域に土足で踏み込まれ、不愉快な形に変えられてしまうかもしれない、という不安に対する一種の防衛本能による反応と見てよい。心底からの悪意があっての振る舞いではないのだ。穏やかに聞き流そう。決して甘く見てはならないが、同時に、決して感情的に反応してもいけない。

 

逆に、何も反応がなかったり、妙に歓迎されている場合は要注意だ。変革など不可能であることに絶対の自信(?)ないし余裕があるか、到底実行不可能な改革の責任を押し付ける意図がある場合がある。この場合は、うまくいきそうだからと油断して、実行を空約束したりせず、速やかに事実を確認して、問題を発見し次第、任命者にエスカレーションしよう。

 

さて、無事にプロジェクトがスタートしたとする。その後も、リーダーは調整の先々で嘲笑を受けることになる。これに一々、一喜一憂していては、到底業務改革など実行できない。穏やかに聞き流し、冷静に、事実に基づいた話し合いを求めよう。もし話も聞いてもらえないようであれば、躊躇することなく上長にエスカレーションしよう。公式なアサインに基づいた話し合いを拒否するのは部門として対応すべき問題だからである。

 

聞き流すことは口で言うほど簡単なことではない。「毛の生えた」心臓が必要だ。相手を跳ね返す「鉄」の心臓ではなく、柔らかく、力強く、ネガティヴな批判を受け止める「毛の生えた」心臓だ。相手が非難し、攻撃しようとしているのは、あなた自身ではない。プロジェクトリーダーという観念上の存在に対してなのだ。その証拠に、非難をしている当人にプライベートで接すれば、仕事のときと全く異なる、フレンドリーな一面を発見できるだろう。

 

相手は役割で動いている。こちらも役割で動いている。お互いに演じているのだから、「悪役」になったつもりで、動じることなく前に進んでいこう。ただし、冷徹な機械のようになってはいけない。舞台で悪役を演じる俳優も、情熱を持ってその役割に取り組んでいる。あなたも熱意を持って「悪役」を演じよう。演じているとはいっても相手は人間。感情が通じなければ動くことはない。

 

ときには熱意をもって悪役を演じよう。

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