業務改革リーダーの心得

オフィスの現場で業務改革に取り組むリーダー達へ、壁を乗り越えてゆくためのノウハウや心得をお伝えします。

業務改善のつもりが改悪になってしまうのは何故か

業務を改善したつもりなのに、かえって非効率になってしまうことがある。例えば、次のようなケースである。

A)データ管理を効率化しようとデータベースシステムを導入したが、ほとんどデータは使われないまま登録作業やメンテナンス作業ばかり増えてしまった

B)帳票が多すぎるとの指摘を受けて削減・集約化したが、例外処理が増えてかえって煩雑になってしまった。

C)課から係に権限移譲をして意思決定のスピードを上げようとしたが、業務品質が確保できなくなった上、係間での非公式の調整が必要になり、課全体としての生産性がかえって低下してしまった。

いずれも珍しい話ではない。おそらく多くの方がこれに近い光景を目にし、あるいは自分自身で体験しているのではないだろうか。ではなぜ、こうした、改善と改悪のすり替えが起きてしまうのだろうか。

 

1.たった一つの原因

いずれも原因は一つ。現場の声を聞かずに業務改革をデザインしてしまったのである。あるいは、声を聞くべき相手を見誤り、結果として、現場の声を拾えていなかった。前述の例であれば、次のようなケースである。

A)コンサルタントが提案した、システム導入によるバラ色の将来像に企画担当者がのめり込んでしまい、あるべき論によって、現場の慎重論を押し切ってしまった。

B)帳票が多すぎる=非効率とのトップの思い込みで鶴の一声が下りてしまい、現場を離れたところで打ち出された削減目標数値ありきで、無理矢理に帳票数を削ってしまった。

C)本社スタッフチームによる組織分析・検討の結果、現場への権限移譲の必要性を結論付けたが、初期に一通りのヒアリングをした以外に、現場への影響確認は行われなかった。

これらはいずれも、その原因において共通している。すなわち、現場の声を拾わずに企画してしまったことにある。

 

2.外部の視点を持ち、現場の声も拾えるリーダーが必要

もちろん現場の声を拾った企画=良い企画というわけではない。現場で長年働いているメンバーからは、新しい発想は出づらくなっていることがある。着任当初は、組織や業務の課題に問題意識や違和感を感じていたとしても、実務の中に埋もれているうち、やがて何も感じなくなってしまう。こうした状況にいったん陥ると、なかなか新たな発想は出てこない。外部からの新鮮な視点が必要になる。

そこで、部外メンバーによるプロジェクトチームや、外部からコンサルタントが投入されることになる。彼らが現場の実態から乖離せずにプロジェクトを進められるかどうかは、リーダーの適性によって左右されるところが大きい。

人の話を我慢強く聞けること。

自分から現場の声を聞こうとする姿勢を持っていること。

人の意見に流されない芯を持っていること。

こうしたリーダーであれば、あるいは主要メンバーがいれば、プロジェクトは方向性を誤らないだろう。業務改革プロジェクトは、何が課題で、どうすればよいのか、外からは見えにくい。何を、どこまで行うかは、結局のところ、リーダー1人または一握りのコアメンバーの腹一つで決まってくるのだ。

 

3.出発点で間違えると軌道修正が効かない

不幸にもそうした人材に恵まれず、方向性を見誤ったまま、プロジェクトがいったん走り出してしまうと、途中で軌道修正することは難しい。出発点に近いところで間違えてしまっているからだ。多くの場合、ゼロからやり直した方が早いのだが、これがなかなか難しい。全部やり直すとなると、提案者は必死に抵抗するのが常である。責任を免れないということもあるが、それ以上に、そもそものタテマエ論は正しいし、本人は完全な善意で信念を持って取り組んでいるからだ。だからこそ、始末が悪い。それを宥めながら、着地点を探っていくためには、また大きな労力が必要になる。

 

まったく、現場の声を聞かずに始める業務改革プロジェクトほど罪深いものはない。

 

現場の声を聞かないという過ちだけは、絶対に、犯してはならない。

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