業務改革リーダーの心得

オフィスの現場で業務改革に取り組むリーダー達へ、壁を乗り越えてゆくためのノウハウや心得をお伝えします。

破壊衝動に身を任せない

誰もが破壊衝動の芽を持っている

人はときに、何かを破壊したい衝動に駆られる。普段は平穏に過ごしていても、いったんストレスの強い環境に置かれ、イライラが募ったとき、そうした衝動に駆られた経験は、誰しもが持っているのではないだろうか。遡れば、我々は幼児期の頃から、そうした感情の芽を持っていた。積み上げたブロックは理由もなく壊したくなったし、わざと蟻を踏み潰したこともあった。そうした一種の破壊衝動ともいうべき感情は、誰しもがその芽を持ち続けている。

破壊衝動にはプラスの面もある

業務改革と破壊は、切っても切れない関係にある。業務改革とは本質的に、何かを部分的に破壊し、作り直さなければ達成できないからである。したがって、業務改革に関心を持つ人は、他の人より大きな破壊衝動を持っている。これに対し、破壊衝動が少ない方は、より穏やかに、現状業務の延長線上で行う業務改善の方を好む。

破壊衝動は、業務改革にとってプラスに働く場合がある。ときにそれが、旧態依然とした現状を破壊する推進力となって、改革が当たり障りのない内容に後退することを防ぎ、エッジの効いた内容へと高めることがあるからである。

破壊衝動のマイナス面を甘く見てはならない

しかし、ここで強調しておきたいのはマイナス面についてである。

破壊衝動が強い方にとって、業務担当者が日々、真面目に取り組んでいるルーチンワークは、許しがたいほど非効率で非生産的なものに見えてしまうことがある。そしてときに、そうした業務を破壊することにサディスティックな快感を覚えてしまう。これがエスカレートしていくと、破壊そのものが自己目的化していく。結果、業務や組織に拭いがたい傷跡を残してしまう。

破壊衝動に駆られて、過激な業務改革を強行した結果、大きな問題を引き起こして組織内での立場を失い、二度とその分野に足を踏み入れられなくなった人を、筆者は目にしてきた。そうしたリーダーはもともと優秀な人物であることが多いだけに、組織にとって、これほどの悲劇はない。

破壊衝動はコントロールしなければならない

業務改革を行う中では、ときに一歩引くこと、あるいはきっぱり諦めることが必要となる。一見無駄に見える作業が、実は組織にとって欠かせない役割を担っていることもあり、改革をした結果、得られるメリット以上に、大きなデメリットが現れてくることも少なくないからだ。

破壊衝動をコントロールし、"建設的"に活用するのは簡単ではない。衝動は思考を麻痺させる。破壊衝動に捉われてしまった人は、自分の判断力が正常でなくなっていることに気づかない。そうした人の特徴は、人の話、特に、破壊しようとしている業務に携わる人々の抗弁が耳に入らなくなることだ。

破壊衝動に囚われていないかを確認する

もし自分が破壊衝動に捉われているかも、と感じたら、そうした相手の言い分を、きっちり受け止め、聞くことができているだろうか、と自分に問い直してみることだ。相手が100%間違っているとしか思えなかったとしたら、破壊衝動に囚われているとみて、まず間違いない。

こうして一歩立ち止まり、自分が破壊衝動に囚われていないかを振り返ることができれば、足を踏み外す危険を減らすことができる。とはいえ、自分で自分の状態を把握することは現実的には難しい。そこで大事なのは、苦言を呈してくれる同僚である。率直に意見を言ってくれる仲間を是非大事にしておきたい。

破壊衝動は効きの強い薬である。適量を適切な場面で使えば、威力を発揮し、改革の推進力となる。しかし常に、中毒になってしまう危険を伴う。いったん中毒になると、ときに組織や業務、そして業務改革を遂行する本人を破壊的な状況に追い込んでしまう。その危険性を自覚し、意識してコントロールすることが必要だ。

破壊衝動に身を任せてはならない。

 

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