業務改革リーダーの心得

オフィスの現場で業務改革に取り組むリーダー達へ、壁を乗り越えてゆくためのノウハウや心得をお伝えします。

業務改革のデザインを間違えないために

業務改革にはグランドデザインが必要である。なぜ改革するのかを理念として明確化し、将来像をビジョンとしてイメージできたら、次は、実際の業務改革のグランドデザインを描く段階に入る。

 

理念やビジョンづくりは、組織の構成員の多くが潜在的に抱いている問題意識を顕在化させる、いわばマーケティング的な活動である。これに対し、グランドデザインづくりは文字どおり新しい仕組みをデザインする、アーキテクト(建築家)としてのセンスが問われる。

 

どのような建築とするかによって、業務改革の成果は、ルールの見直しであったり、システムの導入であったり、アウトソーシングであったり、既存業務の部分的手直しであったり、あるいはビジネスモデルそのものの見直しであったりと、大きく変わってくる。

 

どの方法が良いかは全くケースバイケースであり、一般論として方法論の優劣を論じても意味はない。業務改革リーダーは、はっきりとした正解が見えない中で、何とかしてベストの答えを導き出していかなければならない。

 

その際、気をつけるべきことは、方法論ありきで改革に着手してしまうことである。特に、馴染みのIT事業者やコンサルタントに当初から検討を任せてしまうと、こうした罠に陥りやすい。

 

人はどうしても、無意識に、自分の得意な土俵の上で課題解決に取り組もうとする。必ずしも悪意があってそうするのではない。リソースも能力も限られる中、自分の得意でない方法をあえて検討しようなど、思いも及ばないからである。業務改革を行う上での最大のリスク。それは間違った改革をしてしまうことである。そしてそれが最も起こりやすいのは、この手段の選択のときなのである。

 

こうした過ちを避けるため、業務改革リーダーは、以下を心しなければならない。

 

⒈ 手段ありきで考えない

何らかの既存の枠組みを使って考えることは簡単である。このため人は、流行のフレームワークや、使い慣れてきた方法論のパターンにすがろうとする。

しかし、業務改革リーダーは、ここで楽をしてはならない。実現すべき業務の将来像をはっきりさせた上で、最後に手段を考えるべきである。

そのためにはあらゆる可能性を想定し、課題を明確化し、選択肢を整理してメリット・デメリット・制約条件を明らかにし、結論を導き出さなければならない。まことに骨の折れるプロセスだが、ここをショートカットすることは許されない。

 

⒉ 誰よりも深く業務を理解する

業務を知らずして業務を的確にデザインすることは絶対にできない。そして、他の誰も手を付けなかった改革をするのだから、他の誰よりも業務を深く理解していなければならない。

業務領域全般を深く理解することは現実的ではないだろう。しかし、改革しようとしている範囲に絞って第一人者になることはそう難しいことではない。

 

⒊ 業務担当者の意見を鵜呑みにしない

業務担当者は全体最適を考える立場にないし、それを要求するのは酷である。むしろ気を付けなければならないのは、一見、全体最適の観点から提案してもらったように見える業務担当者のアイデアが、実は何らかの隠れた意図を持っていた場合である。

これを見抜くのは容易ではない。しかし、業務を徹底して理解し、様々な関係者の意見を虚心坦懐に聞き、先入観なく事実を見つめようと努めれば、真実は見えてくるものである。

 

こうした心構えがあれば、間違った方向で業務改革をしてしまうことはまずないだろう。また、このプロセスを踏んでプランをまとめ上げることができれば、自分自身でもその正しさを確信し、自信をもって説得・調整にあたることができるだろう。

 

手段ありきで改革をデザインしてはならない。

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