どんなに小さな改革にも、理念とビジョンを
前回のブログで、ビッグバン型アプローチに飛びついてはならないと述べた。
しかし、目の前の問題だけ対症療法的に対処していればよいという意味ではない。
必要なことは、どんな小さな見直しであっても、必ず「理念」と「ビジョン」をもって当たること。すなわち、なぜ改革しなければならないか、どのような価値を実現したいのか、そして、改革後の将来像としてどのような姿を思い描いているのか、を語ることである。これらを示さなければならないのは、以下の理由からである。
①部分的な対処は、全体最適での解決と相容れないことが多い。
後になって全体最適の観点から同じ対象を再度見直すことになっては、組織にとって無駄以外の何者でもない。常に、大きな理念とビジョンの中に、小さな改革を位置づけるようにすれば、こうした無駄を防ぐことができる。
②理念やビジョンがあると、利害関係者の協力を得やすくなる。
人は自分の行動に意義や理由を求める。それに対する直感的な答えが用意され、納得して協力する場合と、気乗りしないままパッチワークを請け負うだけの場合では、パフォーマンスはまるで異なってくる。
③理念やビジョンはそれ自体が仕事をする。
理念やビジョンは、繰り返し言葉で語っているうちに、やがてそれ自体が一つの独自の文脈と意味を持ち、直接接していない人々にも影響を及ぼしはじめる。「ああ、○○の統合の話だね、聞いてるよ」といった反応が広がってゆくのである。
④理念やビジョンがあると、反対者を説得しやすくなる。
総論賛成、各論反対はどこでも見られる光景だが、総論で反対されてしまっては話にもならない。誰も反対しようのない理念を示すことで、相手を交渉のテーブルにつけることができる。大きな方向性を共有することで、実現方法の論点に持ち込めることも少なくない。そもそも、最終的にどこを目指した改革なのかを示さないのに納得することは多くないだろう。
理念、ビジョンは、キーワード一言で説明できるようにしておく。このキーワードは大事である。言葉の選び方一つで、その後の成果は大きく違ってくる。キーワード選びに当たっては以下に注意すべきである。
〇一言で説明でき、覚えやすいこと。人間の記憶力には限界がある。
〇直感的に理解できること。聞いた瞬間にイメージできなくてはならない。
〇正確であること。キーワード自体が議論の焦点となる。ここで躓いてはならない。
理念とビジョンを熱く語り続けるリーダーに、いつまでも抵抗し続けられる者はいない。
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