業務改革リーダーの心得

オフィスの現場で業務改革に取り組むリーダー達へ、壁を乗り越えてゆくためのノウハウや心得をお伝えします。

歪んだ「組織内官僚」とどう向きあってゆくか

複雑怪奇なルールができるまで

組織が大きくなればルールが必要になる。ルールはやがて解釈や状況変化に応じた改訂が必要になる。新しい解釈を示せば、それが新たなルールとなり、一種の判例法のように積み重なってゆく。

解釈や改訂は常に整然と行われるわけではなく、そのときどきの特殊事情が加味される。つまり、あえて肝心なことを明記しなかったり、婉曲な表現に止めたりする。こうなると、本当の意図は、当事者にしか分からない。時間とともに構成メンバーが入れ替わってゆくと、やがて、理解しがたい、複雑怪奇なパズルが後に残る。

「組織内官僚」の誕生

そこで、こうした複雑なルールの解釈と改訂を司る専門家としての「官僚」が必要になる。「官僚」は程なく、そのルールに関して組織内でナンバーワンの存在になり、様々な相談を受けるようになる。それなりに賢くないと務まらないし、本人もそれを自覚している。解釈一つ間違えるだけで、大きな混乱が起きるリスクもわきまえている。つまり、仕事の重要性を自覚している。しかし、仕事内容自体が難解なため、本当のところ周りからは理解してもらえない。また、組織の本流にいることもない。

「歪んだ官僚」の誕生

こうした状態が長年続いて行くと、ときに、自信と疎外感、プライドと被害者意識が入り混じった、歪んだ性格になってゆくことがある。こうした「歪んだ官僚」は、横柄で、人を見下し、人の意見を聞こうとしない。説明も杜撰で、それを理解してもらえないと相手を面罵する。およそ親切心や思いやりの心の片鱗も感じられない。外部からルールの見直しを求めようものなら、牙を剥いて反論する。まさに世間一般の人びとがイメージする官僚のネガティヴな姿そのものである。

「歪んだ官僚」はどこにでも

こうした「歪んだ官僚」は、官民問わず、一定規模以上の組織には、どこにでも存在する。また、誰もがそうなる可能性を持っている。組織ある限り影のように付き纏う、普遍的な必要悪なのである。個人的な性格の問題ではない。
「歪んだ官僚」に無礼な振る舞いをされると誰もが思わずカッとなってしまうが、彼/彼女を個人攻撃しても、問題は解決しない。一層事態が悪化するだけだろう。その「官僚」は組織内で唯一無二の存在である。上司ですら、おいそれと命令できない。なぜなら、そのルールを本当に理解しているのは彼/彼女だけであり、頼らざるを得ない部分があるからだ。

「歪んだ官僚」と出逢ってしまったら

業務改革を進める上で、こうした「官僚」との接触あるいは対峙は避けられない。この場合、同じルールであっても、それを司るのが「歪んだ官僚」であるか、歪んでいない「素直な官僚」であるかによって、その成果には大きな差が出てくる。それまでデッドロックに陥っていた問題が、担当替えがあった途端、一気に解決することがある。その逆もまた然りである。理不尽といえば理不尽だが、それは事実として受け容れるしかないのだ。重要なことは、業務改革に携わる人びとが、その事実を理解することだ。

「歪んだ官僚」は難攻不落

力押しで押しても決して引かないだろう。理詰めで攻めても話は噛み合わないだろう。トップダウンで落とそうとしても、相手の上司は部下との対立を避けようとするだろう。「歪んだ官僚」は組織のルールを熟知しているがゆえに、自分の立場を失うような、ルールを逸脱する振る舞いは決してしない。何より、必ずある面では、彼/彼女の主張は正しいのだ。100%間違ったことなど決して言わない。また、ある種の使命感を持っており、頭も良いので、たいてい自部門内では一定の評価を得ている。

対処方法は2つしかない

こうしたとき対処できる方法は2つだ。

一つは、その官僚よりもルールに詳しくなってしまうのである。彼/彼女は強気でい続けるための拠り所を失い、問題解決の道が拓けるだろう。しかし、ルールに習熟するのは容易なことではない。時間の投入はもちろん、ルールを教えてくれる協力者、いや教育者を見つけなければならない。ハードルは決して低くない。

2つめの方法は、発想を変えることだ。何度かやり取りをしていると、彼/彼女が、本当にこだわっているところはどこなのかが見えてくる。問題解決の方法は大抵、いく通りもある。仲間と知恵を出し合って、他の選択肢によって官僚との衝突を避けつつ、問題を解決する方法を考えてみよう。大手門を突破できないのであれば、搦め手から攻めてみよう。意外なほど簡単に解が見つかったりするものである。

「歪んだ官僚」を甘くてみてはならない。出逢ってしまったら、潔く、急がば回ることにしよう。

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