業務改革リーダーの心得

オフィスの現場で業務改革に取り組むリーダー達へ、壁を乗り越えてゆくためのノウハウや心得をお伝えします。

業務改革のすすめ方:基本編(3)

(つづき)

ステップ3)解決方針とビジョンの明確化

ステップ2までは、業務改革のテーマを決めるための非公式の事前準備活動。ここからがいよいよ業務改革を表に打ち出してゆく段階、すなわち組織内で公式にプロジェクトを始動する段階である。

 

このステップにおいて目指すのは、①解決の方針と解決後のビジョン(将来像)を明確化し、②組織承認を得ることである。後述するように、この段階で組織承認を得ておくかどうかで、プロジェクトの成否には大きな差が出てくる。

 

この段階では、まだ詳細な調査もしていないので、具体的な解決策まで固めることは難しい。むしろ決め打ちは意図的に避けた方がよい。業務改革では、後の詳細調査・具体策の策定の過程で思わぬ問題が発覚し、予想もしなかった形の解決策に行き着くことが少なくないからである。

 

したがってここでは、概要調査で得た手がかりの範囲で総論的な方向性をまとめ、論点の整理と明確化を行うことまでを目指す。解決方針については、できればいくつかの選択肢として整理し、それぞれのメリット/デメリットと制約条件まで明確にしておきたい。

 

また、必ずしも文章化する必要はないが、業務改革リーダーとして、現時点でどの選択肢が正しいと信ずるかも、明確な理由とともに持っておくことが必要である。これは、周囲を巻き込んでいく際に相手の信頼を獲得するためである。自分の信念も持たない人の業務改革など、誰も相手にしようとしないからである。

 

まとめ方については、プレゼン技術の話になってくるのでここでは立ち入らないが、自社でよく使われているフレームワークなどがあれば優先的に活用する。その方が、受け手にとって、新たにフレームワークを理解するための労力を節約できるからである。

 

方針とビジョンをまとめたら、少しでも関係しそうな部門には幅広く説明してまわることだ。まだ結論が出ていない段階での合意形成にどこまで意味があるか、と思われるかもしれないが、これを行っておけば、以下のような大きなメリットが得られる。

 

・今後の具体策の検討にあたり、様々な立場・視点からの注意喚起を得られる

・その後控える厳しい交渉・調整に向けて、議論の入口を開いておくことができる

・多くの部門を巻き込んでいること自体が、改革推進を正当化する力になる

 

改革の影響を受ける側としては、こうしたプロセスを踏まないまま具体策が決定され、いきなり突きつけられたとしてしても、まず感情的に受け入れがたい。はじめに拒絶反応や不信感を植え付けてしまうと、それが論理的なものでないだけに、払しょくするのに大変な苦労を伴う。事前に丁寧な根回しをしておく方が、はるかに効率的なのである。

 

なお、ここでの説明は話しっぱなしにしてはいけない。方法は問わないが、どういう形であれ必ず同意を得ておきたい。明示的な意思表示が取れない場合でも、少なくとも、検討を先に進める必要があるので、異論があれば◯日までにご連絡ください、といった形の照会をかけ、黙認を得た形にしておく。

 

<つづく:次回は「ステップ4)詳細調査および解決策の具体化」>

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