言葉に伝播力を持たせるには
言葉に仕事をさせる
成し遂げようとする改革が大きなものになればなるほど、より多くの関係者を巻き込み、動かしていくことが必要になる。すべての関係者を説得しようとすれば、どうしても時間がかかってくる。このとき、適切なメッセージが自らの活動とともに発信できていると、ある段階から言葉そのものが伝播力を持ち、自分自身に代わって仕事をし始める、すなわち関係者に影響を与えることがある。
こうした“言葉の伝播力”を使いこなせるかどうかで、成し遂げられる改革の規模も左右される。必要なのは、改革の核となるコンセプトを体現しており、ひと言で内容を想像できる、そして一回聞いただけで記憶に残るようなメッセージである。
行動と成果の裏付けによって、言葉は力を得る
奇を衒った言葉である必要はない。必ずしもリズム感や響きがよい言葉でなくてもよい。例えば、◯◯の標準化、△△の共通化、◇◇のグローバル対応、◻︎◻︎期間の短縮化…といったありきたりのキーワードでも構わない。重要なのは、それが事実としての行動と成果に裏付けられていることだ。
言い出した当初は、誰も見向きもしないかもしれない。あるいは、趣旨には反対しないまでも、様子見を決め込まれてしまうかもしれない。しかし、そうした冷たい視線の中でもコツコツと努力を積み重ね、実績が生まれてくると、やがて人の見る目が変わってくる。訴え続けてきたメッセージは、いつしか力を持ち始め、好感をもって人口に膾炙されるようになるのである。
伝播力を得るとどうなるか
ここまでくると、訴え続けてきたメッセージに共感した誰かが、頼まれもしないのに、キーワードに基づく取り組み(例えば“標準化”)を、行ったりするようになる。さらに、必ずしも取り組みに賛同しなかった人々の抵抗感をも、知らず知らずのうちに削いでいく。言葉の持つ伝播力が、彼らを包み込む空気を変え、感情や判断に影響を及ぼしていくのである。
もちろん、ただ同じ言葉を繰り返せばよいわけではない。実態としての努力を何ら行わないまま、同じメッセージばかり繰り返していれば、上記とはまったく逆の、マイナスの影響を及ぼしてしまう。
耳にタコができるまで
練りこんだメッセージを、耳にタコができるほど、繰り返し訴え続けること。そしてそのメッセージに実体を与えるような実績を積み重ねること。この2つができれば、実現できないことは世の中にほとんどないと言ってよい。何かを続けることほど難しいことはない。しかし、続けることほど、何かを動かすチカラを与えてくれるものもないのである。
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