業務改革リーダーの心得

オフィスの現場で業務改革に取り組むリーダー達へ、壁を乗り越えてゆくためのノウハウや心得をお伝えします。

鉄壁の社内ルールを作り変えさせる方法

どの組織にも、日常業務を円滑に運営するためには、ルールが必要である。しかし、業務環境が変化し、現実にそぐわなくなると、そのメリットは低下し、かえってマイナスの影響すら及ぼす場合がある。そこで、ルールの見直しが必要になるが、いったん構築された仕組みを作り直すことは、常に困難を伴う。

ルールの「一貫性維持作用」

どのようなルールも、多かれ少なかれ、組織内外の他の仕組みとの関わりを持っているが、特に、大企業や官公庁のように組織の規模が大きくなってくると、変更に伴う影響を見極めるだけで至難の業となる。ある程度、その見極めができたとしても、次に、新業務を運用させるための緻密で地道な業務設計作業が待っている。さらにルールには、それ自体が一貫性を維持しようとする「一貫性維持作用」とも呼ぶべき力が働いている。これがルールの管理者をして、改革の取り組みに対し、反射的に抵抗させる方向に働き、多大な調整作業を発生せしめる。

ルール見直しに伴う①影響の見極め、②新業務の設計、③「一貫性維持作用」の克服のうち、①と②については、近道はないものの、一つ一つ潰していけば、いつかは作業は完了する。工夫次第では、その作業効率を高めることもできる。しかし、③の「一貫性維持作用」のハードルは、力業だけでは乗り越えられない。タイミングとアプローチが的を得ていなければ、どんなに労力をかけても変えることはできない。

「一貫性」を崩す方法

では、どのようなアプローチを取るべきなのか。最も効果的なのは、「一貫性維持作用」そのものをターゲットにして、意図的、戦略的に、「一貫性」の一部を崩し、作り変えていくことである。具体的には、以下の手順を踏んでいく。

  1. 既存のルールの拠り所となっている価値観やポリシーに対し、より上位の理念や経営方針といった新しいパラダイムをぶつけ、判断基準を相対化してしまう。(例:正確性にスピード重視をぶつける)
  2. あえて一貫性に反するような、新しいパラダイムを体現する施策を、異物として仕組みの中に紛れ込ませてしまう。(例:新商品の提供プロセスに、既存商品にはなかったプロセスを導入してしまう。)
  3. 異物が定着するにつれて、矛盾を抱えた仕組みは不安定化してくる。その段階で、新しいパラダイムに合わせて共通化する方向でルール見直しを提唱し、全体を作り変えてしまう。

一気呵成に全体を変えてしまう方が手っ取り早いようにも見えるが、その分、相当な抵抗と、失敗のリスクを覚悟しなければならない。そこで、ルール全体を一度に相手にするのではなく、その一角に、いわば「蟻の一穴」を穿(うが)った上で、戦略的に全体を作り変えていくわけである。

なぜ「蟻の一穴」が有効なのか

一見、自作自演の姑息な手段のようにも見えるが、ちゃんとした合理性もある。このアプローチは、見方を変えれば、はじめに混入させた「異物」が組織の中できちんと機能するかをテストし、問題がないことを確認してから全体に展開するアプローチとも言えるからである。国の「構造改革特区」などにも通ずる発想であり、決して珍しい取り組みではない。「構造改革特区」と異なるのは、この取り組みは必ずしも当初から組織の公式活動へと昇格させなくてもよい点である。むしろ目立たせない方がよい場合すらある。非公式な活動を、いつの間にか公式化してしまうことに、このアプローチの妙がある。

ただし、一つ難がある。前述のように時間がかかることである。前段で述べたような、組織としての公式な見直しができるのであれば、その方が望ましい場合もある。

 

一見、鉄壁に見えるルールも、「蟻の一穴」を穿(うが)つことで、作り変えさせることが可能である

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