なぜオフィスでの業務改革が進まないのか
オフィスでの業務改革がなかなか進まないのは、製造現場を母体として発展してきた業務改善の方法論に替わる、効果的な方法論がないためである。製造現場と、オフィスの現場では、業務改革への取り組み方が異なる。
製造現場での改善対象は、主な相手がもの言わぬ「モノ」だけに、そこにある問題は、誰かが積極的に発見してやらねばならない。問題をどう発見し、定義するかが最大の肝となる。では解決が簡単かといえば、ケースバイケースなのだが、いったん問題が発見されれば、「モノ」自体が積極的に解決に対して抵抗することはない。
他方、オフィスの業務は主な相手が「人間」だけに、問題点については、既に誰かが気づいており、周知となっていることが少なくない。逆に、人間だからこそ、あえて隠されてしまうと、問題の発見・定義自体が困難を極めることになる。また、その解決についても、相手が「人間」だけに、協力が得られればあっけないほど速やかに解決できるが、いったん抵抗に遭うと、非常な労力を要することになる。
現場の社員だけではなかなか突破できないため、ときに強制的なトップダウンや外圧としてのコンサルティングが用いられるが、業務改革の答えは細部に宿っている。組織全体に張り巡らされたルールや仕組みが、細部でもつれているわけで、強引に切り離そうとすると出血を起こす。結局、現場がその気になって、地道に取り組まなければ、改革は進まないのだ。
通常そこまでメスを入れられないから、外部コンサルタントは、アウトソーシングやERPパッケージの導入、シェアードサービスセンター化といった、「外枠」からアプローチし、その実行過程で業務を丸裸にするか、業務そのものを置き換えてしまおうとする。
本当は、内部から変えていくことは可能なのである。しかし、それをどう進めたらよいのかが分からない。オフィス業務においては、「人間」が主たる問題であるがゆえに、QC七つ道具や「フレームワーク」で問題を発見し、定義できたとしても、それを解決するための、「定石」ともいうべき方法論がないのだ。しかも、発見し、定義された問題にしても、既に現場で認識されている問題よりも、優先度が低いことが少なくない。
結局、「人間」には「人間」でしか対峙できない。そこで問われるのは、課題解決力そのもの、人間力そのものである。フレームワークやITの知識があっても、それを使いこなす人間がいなければ役に立たないのだ。つまり、一歩一歩、力を高めていくしかない。
業務改革の力を高めるためには、人間力を高めるしかない。
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