業務改革リーダーの心得

オフィスの現場で業務改革に取り組むリーダー達へ、壁を乗り越えてゆくためのノウハウや心得をお伝えします。

業務改革のすすめ方:基本編(4)

ステップ4)詳細調査および解決策の具体化

解決の方針が固まったら、業務改革の具体的な中身を詰める段階に入る。的確な解決策を導き出すためには、改革の対象となる業務について、ポイントを絞って調べ抜くことが必要になる。

 

このとき必ずやらなければならないこと、それは、業務改革リーダー自らが、自分自身の目で鍵となる事実を確認してゆくことである。プロジェクトのメンバーはもちろん、業務の"第一人者"の知識にも頼りきってはならない。場合によっては、業務担当者が正しいと信じてきた従来のやり方を否定し、新しい方法を据え付けることも必要になる。そのとき議論のベースとなる事実を全部相手に依存していては話にならないからだ。ときには相手の説明の矛盾や問題点を見抜き、指摘するくらいでなければならない。

 

業務全体に詳しくなる必要はない。業務改革に必要な範囲にポイントを絞って、業務の課題、見直しの効果、具体的な取り組み内容、見直し前後での変化点、変更に伴う影響・リスクなどを、自分自身の言葉で確信を持って語れるようにするのだ。そのためには、会社の規則、システムの仕様書、場合によっては法令をも読み解く必要があるかもしれない。しかし、最も大事なことは、業務担当者の業務の生の実態を理解することである。

 

業務理解というと、業務フロー作成やモデリングといった業務の可視化を想起しがちであるが、業務改革における業務理解は、こうした方向の取り組みとは本質的に異なる。ひと言で言えば、既存の仕組みを破壊する突破口を探り当てるために業務を理解するのである。

 

すなわち、業務改革に伴う業務調査において最も重要なことは、ステップ1で検討した、

 ①何が課題か(◯◯確認作業の効率化)
 ②現状どのような問題が起きているか(◯◯の確認に手間がかかっている)
 ③どのような状態を実現すべきか(◯◯の確認作業が不要となっている)

について、徹底的に裏付けを取って、取り組み内容を明確化し、実現可能性を検証し、効果や影響を分析・評価し、「破壊」のための武器として磨き上げることなのである。

 

その前提として、業務全体の流れを基礎情報として掴む必要は、当然ある。しかし、ある程度以上の組織であれば、大抵、業務フロー程度は作っているものであり、あえて業務改革のために全体の業務フローを作成し直すほどのことはない。やむを得ず必要な場合は、大まかな業務のかたまりごとに簡単な関係図を作り、作業の順序に沿って普段行われていることを箇条書きにする程度でよい。

 

要は全体像の理解に必要な事実さえ掴めればよく、詳細な流れまで文書化する必要はないのだ。気をつけるべきは、フロー図を作っているだけで仕事をしたような錯覚を起こしてしまうことだ。システム構築や事業企画における業務設計とは異なり、業務改革においては、フロー図作成自体にはほとんど付加価値はない。

 

さて、ゴールとそこまでの道程が見えたら、次はその解決策を形にして、業務担当者にぶつけていく段階である。この辺りから、反対論、慎重論が噴出してくる。業務改革リーダーにとっては、ここからが正念場である。ステップ3で総論賛成してもらったことはきれいに忘れ、一から説得にあたってゆこう。

  • ときには心ない反論や批判、非難もあるだろう。何も業務のことを分かっていないくせに、と嘲笑されることもあるだろう。しかし、決して感情的にならずに、冷静に、相手の懸念をひとつずつ解消していくことだ。
  • どんな指摘も無視してもいけない。色々な質問があるだろう。それら一つであっても、回答しないまま残してはならない。後になって、未解決の問題が残っているとの批判の機会を与えることになるからだ。
  • 改革に伴う外部へのマイナスの影響を指摘してくることもあるだろう。これも避けてはならない。自部門の守備範囲を超えていたとしても、影響の有無をヒアリングしよう。売上や原価への影響をシミュレーションしよう。的確な指摘には、相手の要求以上に手間をかけてきっちり応えていこう。こうしたチェックをくぐり抜けることは、後段の組織承認の段階での武器にもなる。

 

ただし、問題点のすり替えにだけは決して応じてはならない。すなわち、「そもそも会社の規則が不明確なのが問題なのだから、まずはそこを見直すべきだ」といった類の主張である。自分の守備範囲を超えた役割を引き受けてしまうと、たちどころにプロジェクトは頓挫する。相手もそれを知っていて乗せようとしてくる。

 

「会社規則の問題であれば、どうぞご自分で◯◯部と交渉ください」と、丁重にお断りしよう。

 

<つづく:次回は基本編シリーズ最終回「ステップ5)承認獲得と解決策の実行」>

 

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